当ブログでも取り上げざるを得ないだろう。
先週日曜日に放映された第57回NHK杯将棋トーナメント2回戦。
羽生二冠vs中川七段の
一局である。
HHK杯史上最大の逆転劇(解説の
加藤九段・談)が起こった。
私も幸いにして歴史的一局の目撃した一人であるが、以下のことわりを入れておく。
・放映前に結果を知ってしまうときもあるが、本局は結果を事前に知らなかった。
・自身も将棋を指すが素人レベルである。
素人レベルが書かなくても良いという意見もあるだろう。
しかし素人レベルの視線での見解ということに当ブログは価値を見い出したい。
大義名分的なことを書かせてもらうと、本局を後世に語り継ぐ必要があるのだ。
振り駒で先手番を得た羽生二冠。
本局の解説者・加藤九段を意識してのことだろうか。
初手▲2六歩〜▲2五歩と駒を進め、▲3八銀と上がったところでは棒銀かと思った。
私には理解できなかった▲7七角という手も出て、興味深い序盤戦であった。
▲1七桂〜▲2五桂という桂馬の活用もあったが、これは疑問手のように感じた。
△2四銀により、桂馬が質駒となり、先手の駒組みに制限ができてしまったからだ。
とはいえ、先手はあの羽生二冠である。
何かあるに違いない。
そんなことを考えていた。
そんなこんなで銀桂交換の駒損もあり、少しずつ形勢を悪くしていく羽生二冠。
▲2三歩と玉頭に歩を叩いたのだが、これを△同玉と取る手はなかったのか。
これもまた理解の難しい攻防であったが、この▲2三歩も大逆転の布石になった。
千日手か?
そんな期待(?)を抱かせたシーンもあったが、羽生二冠から打開。
しかし、この千日手打開により、羽生二冠は形勢をさらに悪くさせることとなる。
王手馬取りをかけられ、馬をタダで失った羽生二冠。
早逃げで延命を図るが、形勢は完全に後手の中川七段へと傾いていた。
「いつ投げるのだろう?」私の興味はもはやこの一点のみであった。
▲1八角。
私には意表を突く一手であった。
しかし、それでもこの形勢を変えるには至らないと感じていた。
羽生二冠は▲2六飛と飛車も切るが、最後の悪あがきに見えた。
もはや万事休す、もう投げる一手だと思った。
しかし、次の一手が指された。
▲2ニ銀。
私にはプロ棋士のいう「形作り」にしか見えなかった。
△2ニ同金と応じられると、次の▲2ニ同歩成りが王手ではないので負けである。
中川七段の△2ニ同金に、羽生二冠は▲4三銀成りと指した。
この手があったのである。
遠く1八の地点に孤立している角が効いているのである。
持ち駒をすべて使ってピッタリ詰ますという、まさに計算し尽された見事な詰み。
負けを悟ったのか、お茶をゆっくりとすする中川七段。
そして、中川七段が投了し、NHK杯史上最大の逆転劇が幕を閉じた。
形勢が悪くなっても最後まで諦めない羽生二冠の姿勢に感動。
当の羽生二冠からすれば、勝ち筋があるから投げなかったということだろうか。
将棋の醍醐味、そして羽生二冠の凄みを感じさせられた日曜のお昼であった。